Less is beauty

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野菜の香り、炒める音、静まる心。料理は瞑想。/monk 今井義浩

monk  レストラン(京都・東山)
5月の「HOME RETREAT」にご賛同いただき、ともにプログラムをつくった、京都のレストランmonkの今井シェフ。「料理をすることは瞑想に近いかもしれません。」プログラムに同封した今井さんの心のこもった手紙の一部を、こちらでご紹介。
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「Less is beauty HOME RETREAT with monk」のレポートはこちら

 

野菜に手で触れる。包丁で切る。木べらで混ぜる。匂いを嗅ぐ。鍋からの音を聴く。 料理をする時、人は無心で手を動かし、ただ目の前のものだけに集中し、心が静かになっていくのを感じます。料理をすることは瞑想に近いかもしれません。

私は、京都でmonkというレストランを営んでいます。毎朝畑を周り野菜を仕入れ、薪の火を使い日々の料理を作っています。

京都市街から北東へ車で30分ほど、山に囲まれた大原という集落があります。若手のオーガニックの方達が多く移り住み、また代々住んでいるおじいちゃんおばあちゃんも丁寧に野菜作りを続けている、とても美しい場所です。私はそこへ毎朝通い、野菜市場や畑を周り、日々お店で使う野菜を分けてもらっています。

素晴らしい農家さん達の仕事、自然環境の結晶のような野菜でつくる、シンプルなスープの作り方をお伝えします。味付けは塩とオリーブオイルのみの最小限で。ゆっくりと煮込む時間が、野菜の味そのものを引き出します。作り方も一切特別なこと、難しいことはありません。

出来るだけ厚手の、蓋をできる鍋に、オリーブオイルを大さじ2杯ほど敷きます。そこに、1cm角に切った野菜を根菜の硬いものから順番に入れていきます。

一種類の野菜を入れる度に、塩を3本の指で一つまみする分だけ加えて下さい。塩を振りながら野菜の水分を引き出し、中火/弱火で丁寧に炒めながら。全ての野菜を鍋に入れ、野菜がしんなりするまで待ちます。

野菜に火が入ることで透き通り始め、しっかり水分が出始めたそのタイミングで、ひたひたのラインより5cm程多めに水を入れ、蓋をします。そこからは優しく沸騰する程度の極弱火でゆっくりと20分ほど煮込んでください。

その後、火を止めて蓋をしたまま少なくとも20分以上置きます。この寝かせる時間を作ることでそれぞれの野菜の風味が全体に馴染み、一体感が出てくると思います。

最後に味を確かめて、足りなければ塩を足して調整して下さい。野菜自体から、驚くほどの甘みと旨味が出て、ピュアで優しい味わいのスープが出来上がると思います。

キッチンに立っている間、ぜひ料理している時の感覚そのものに心を向けてみて下さい。野菜の手触り、切るときに広がる香り。鍋の中で炒められる野菜が立てる静かな音。ゆっくりと出てくる水分は、土を通して野菜が吸い上げた雨水そのものです。

そしてゆっくりと煮込み、寝かせる時間。普段はなかなか作ることのできない贅沢な時間なのではと思います。スープがゆっくりと煮込まれていく香りと湯気が、あなたの部屋を満たしていますように。全てが整い、調和の中にありますように。

 

photo:柳詰有香

 

monk 今井義浩

1982年茨城県生まれ。エンボカ京都シェフを経て、料理写真集”CIRCLE”を出版。
その後フリーランスの料理人として旅をしながら料理を作る。
2015年末、京都にて自店 ”monk” をオープン。

Instagram: @yoshihiroimai