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旬を五感で味わう。/菓子職人 名主川千恵

京都・菓子屋のな
京都の ○間 でひらかれた、お茶と香りのイベントにて、オリジナルのお菓子をご用意くださった「菓子屋のな」。和菓子とは思えない、旬の果物を使ったみずみずしい二層の味わいに、誰もが感動していました。そこには、和菓子の固定概念を広げ、新しい可能性を広げたいと願う、名主川千恵さんの想いがありました。
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普通の大学を出てから、やっぱりものづくりがしたい、と思って夜間の和菓子の製菓学校に行きながら、老舗の和菓子屋さんでアルバイトをはじめたところから、和菓子の世界に飛び込みました。

 

上菓子の美しさに憧れましたし、伝統文化はとても素晴らしいものだと感じていましたが、一方でこの世界を知れば知るほど、「もったいない」と思うことも増えました。

 

ひとつは、上菓子は色や形で季節を表現しますが、ほとんどあんこに味をつけないため、色はつけても食べると全て同じ味。洋菓子の世界では、旬の果物や野菜などいろんなもを使うのに、和菓子はほとんどあんこと数種類の食材しか使わないんです。それだと、毎日食べたいと思ってもらうのは難しいなあ、と思っていました。

 

また、和菓子につける名前である「菓銘」という文化も、とても素敵なものでありながら、高尚な文化でもあり、わからない人を排除してしまう気がしていました。なかなか和菓子が身近でなくなってしまった現代の人たちにも興味を持ってもらえるように、こちらから門戸を開いていくことで、この美しい和菓子の世界を盛り上げていきたい、と思ったのです。

 

そこで、アルバイトをしながら、自分のInstagramやポップアップなどで、個人の活動として、オリジナルの和菓子をつくって発信することに。それが次第に反響を呼んで、ついに今年5月にお店もスタートしました。料理人である旦那さんと結婚したことで、果物やハーブの仕入れ方などが隣で学べたということも、大きな後押しになりましたね。

 

和菓子なのに、旬の果物やハーブをつかったり、香りをつけるためにスパイスやブランデーをいれたりもします。また、お菓子の名前は、気になった音楽や映画、本などを題材につけています。

 

また、お菓子に合わせる飲み物も、お茶だけではなく、和紅茶、コーヒー、ワイン、日本酒などをペアリングしています。お酒と合わせる「酒と菓」というポップアップイベントは、いつもとても好評です。

 

 

今回、SENNと○間 のイベントにてお作りしたのは、「うぶ」という名前をつけた、羊羹。

SENNのウォーターオイルバランサーから、インスピレーションを広げ、生まれたての肌のういういしさ、みずみずしさ、そして二層の見た目を表現しました。

 

いま採れる国産ライムの華やかな香りと、二種類のりんごを使っています。上には、朝摘みカモミールをのせて、さっぱりとフレッシュな香りに仕上げました。和菓子で生の葉っぱを使うことなんて、ほとんどないですよね。

 

やっぱり、人が本能的に食べたくなるものって、旬の果実だったり、ストーリーがわかるものだと思うんです。和菓子が好きだからこそ、いいところを残しながら、垣根をなくしていって、多くの人に愉しんでもらえるように、新しい出会いを切り開いていきたいんです。

 

<PROFILE>

名主川 千恵

菓子職人。菓子屋のな 店主。京都の老舗和菓子屋に務めながら、2018年よりInstagram(@wagashinuna724)で、自身のオリジナルデザインの和菓子を、物語を添えて投稿し話題に。個人名義でイベントに出店などを重ね、2020年5月に菓子屋のなをオープンさせた。

 

@kashiya.nona

@wagashinuna724