CART IS EMPTY
カートに商品が入っておりません
Less is beauty
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現在地を知るためのしるし。菅原敏
部屋でひとり、小さな箱からお香を出して、火を付ける。
「いまここに自分はいるんだ」と、
ささやかな狼煙(のろし)を上げているような感覚になります。
自分の現在地を知る。
儀式のような祈りのような時間がそこにありました。
先日、お寺で座禅瞑想の体験をしたときにも、お香が焚かれていました。
なぜ焚くのか尋ねると、香りによる精神効果だけでなく、時間を計るためでもあるのだと。
火を付けると、ある一定の時間をかけて煙になっていくお香。
一本の線香は時間軸であり、立ち上る煙は、時間の形でもある。
お香は、時間という目に見えないものが可視化され、
過去と未来をつなぐ装置とも捉えられます。
また、香りは、場所をつなぎ、旅をする装置でもあります。
新旧入り交じる尾道の町並み。
収穫をお手伝いした島のレモン畑。
そのレモンの原産地、海を越えたインドのアッサム地方。
LOGをつくったのは、インドのスタジオ・ムンバイ。
どこか懐かしいような異国のような香りに乗って、
記憶や想像の世界へ、どこへでも。
過去と未来、こことどこか遠く。それらの交差点のような、香りと煙。
incense LOGと、そこに寄せた一遍の詩で、
「いまここ」を感じられる時間になればと思います。
<PROFILE>
菅原敏
詩人。2011年、アメリカの出版社PRE/POSTより詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』をリリース。以降、執筆活動を軸にラジオでの朗読や歌詞提供、欧米やロシアでの海外公演など幅広く詩を表現。近著に『かのひと 超訳世界恋愛詩集』(東京新聞)、燃やすとレモンの香る詩集『果実は空に投げ たくさんの星をつくること』(mitosaya)、『季節を脱いで ふたりは潜る』(雷鳥社)。東京藝術大学非常勤講師
Instagram:@sugawarabin