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何もないが全てある。 / 八木夕菜

ビジュアル・コンポジット・アーティスト
全てが存在するが何もない―。大乗仏教の教えである「色即是空」の思想を写真というメディアで表現した、八木夕菜さんの作品シリーズ「Blanc / Black」。SENNの一周年を記念したアート作品として、その作品シリーズの新作を撮り下ろしていただきました。

八木さんに、この作品に込めた思いを綴っていただきました。
何もないが全てある。 / 八木夕菜00
何もないが全てある。 / 八木夕菜00

“この世に存在する全ての物質や現象は単体で存在するのではなく、相対的に存在するが故に「空」であり実在がない。「空」は「無」ではなく、この世に存在する「全て」でもある。”

 

大乗仏教の中核となる「色即是空」「空」の思想です。

 

「Blanc / Black」は、写真における「空」の表現を写真の本質である「光」と「影」をテーマに制作した「白」と「黒」の作品です。

 

何もないが全てある。 / 八木夕菜01

 

「白」や「空白」を意味するフランス語の“Blanc”は、英語で「黒」を表す“Black”の語源でもあります。一見、逆の意味に捉えられますが、どちらも「色がない状態/色がたくさんある状態」を表しています。光の三原色RGBを合わせると「白」に、色の三原色CMYを重ねていくと「黒」に近づいていきます。これが、Blanc/Blackの関係です。

 

写真に置き換えると、多重露光を用いて1枚のフィルムに画像を重ねていくと、写真は「白」に近づいていきます。

 

一方、多重印刷という手法を用いて一枚の紙に印刷を重ねると、写真は「黒」に近づき、豊かな深い色を形成していきます。

 

“光と影は、表裏一体であり、「白」も「黒」もどちらも同じ「色」である。”

 

全てが存在するが何もない、光と影。

 

何もないが全てある。 / 八木夕菜02

 

今回撮影したのは、素朴で美しい夏至の季節の草花たち。情報を重ねる度に草花は次第に輪郭をなくし、薄っすらとその存在を消していくかのように見えますが、確かにそこに存在していた「記憶」は幾十にも刻まれています。

 

何もないが全てある。 / 八木夕菜03

 

写真を重ねていくことは、時間と空間を重ねていく行為であり、無数の時間と空間が重なり、多次元へと広がって行きます。

 

何もないが全てある。 / 八木夕菜04

 

全てが写っているにもかかわらず、全てを認識することが出来ない白と黒の写真。

目には見えない、無限に重なりゆく時空を、1枚の写真の中に感じてもらえたらと思います。

 

<LIMITED PRESENT>

 

一周年の感謝を込め、日常の中で余白を感じられる瞬間をお届けできたらと願い、PC・スマートフォン・タブレットの壁紙として6月21日-30日の期間限定で作品を配信いたします。こちらのページよりダウンロードいただけます。

Wallpapers / 壁紙

 

何もないが全てある。 / 八木夕菜05

<PROFILE>

八木夕菜
ビジュアル・コンポジット・アーティスト

2004年、ニューヨーク・パーソンズ美術大学建築学部卒業。カナダ、ニューヨーク、ベルリンを経て、現在は京都を拠点に活動。「見る」という行為の体験を通して物事の真理を追求し、視覚と現象を使った作品制作、インスタレーションを国内外で発表している。「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」ポートフォリオ・レビュー 最優秀 ハッセルブラッド賞(2016)受賞。パリ国際現代写真アートフェア、FOTOFEVER (2017) に招待作家として参加し、2019年Eberhaard Awardsにノミネート。 DESIGNART 2019 ではデザイナー柳原照弘氏と共に大蔵山スタジオの展示制作、BIG EMOTIONS AWARDSを受賞。

 

HP:https://yunayagi.com/
Instagram:@yunayagi