CART IS EMPTY
カートに商品が入っておりません
Less is beauty
カートに商品が入っておりません
同じ空は二度とないけど、見覚えがあることなど/川端里恵
買い物の帰り道、上空から爆音が近づいてきて、見上げると旅客機の腹が見えるくらいの高さで飛んでいた。墜落事故かとびっくりしたけれど、調べたら我が家の近くは羽田空港便の新ルートに該当していたもよう。本来なら、この夏はたくさんの外国人観光客を乗せた飛行機が空を飛びかっていたのかもしれないと思うと、あまり見かけないことも寂しく思えた。
「このあいだ買い物へ出かけてあじさいのおおきな房の下をくぐったら空が何となく金色に染まっていて、広がっていて、そこから明るい雨がふってきた。ああこれのこと、いつかみたこれのこと、わたし知ってる、それにしてもきれいだなあと思うことなど」
これは川上未映子さんのエッセイ『魔法飛行』に出てくる一節。震災のあった2011年を跨いだ約1年が綴られたこの本には、空と雨の描写がたくさん出てくる。
この空の感じ見たことあるなとデジャヴのように思うこと。すごくよくわかるけれど、久しく感じてなかった気がする。爆音でもしない限り、空をまじまじと見上げてなかったのかもしれない。
震災の前と後。コロナの前と後。同じ感覚には戻らない。
同じ空は二度とないけれど、似たようなことを思ったなと空を見る。
<Profile>
川端里恵
1979年生まれ。ウェブマガジン「mi-mollet(ミモレ)」副編集長。『あしたのジョー』の大ファンで、講談社へ入社。おすすめの本を紹介するPodcast「真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜」も毎週配信中。
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