Less is beauty

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心の深いところへ / Editor 藤井志織

梨木香歩『炉辺の風おと』
テーマ「深」
秋が深まる時期。「深まる」という言葉は、春・夏・冬にはあまり使いません。それは秋がとても奥行きのある季節だと言えるからなのでしょう。深呼吸をして、自分の深いところに潜る。秋の夜長にぴったりの本。
梨木香歩『炉辺の風おと』01
梨木香歩『炉辺の風おと』02
梨木香歩『炉辺の風おと』03
梨木香歩『炉辺の風おと』04
梨木香歩『炉辺の風おと』05
梨木香歩『炉辺の風おと』01
梨木香歩『炉辺の風おと』02
梨木香歩『炉辺の風おと』03
梨木香歩『炉辺の風おと』04
梨木香歩『炉辺の風おと』05

もちろん好き好んで辛い目に会いたいわけではないけれど、人生経験によって感じ方、考え方を深められるのは悪くないと思っている。

弱っている人の気持ちも汲めるようになり、共感力が強くなり、きっと人生の深みも増す。思慮深い人はとても魅力的だし、歳を重ねることの意義もそこにあると信じている。

 

私にとって「深」さを感じる作家といえば、梨木香歩さん。

小説だけでなく、随筆も本を開いた1ページめから引き込まれる。ごく地味なエピソードが淡々と書かれているのに、梨木さんが感じたり、思い出したり、考えたりすることはとても深く、ときにドラマティック。たまに本を伏せて呼吸を整えなくてはならないくらい心に響く。

いつも読み終えると、心が潤ってやわらかくなり、遠くに味方がいると確信できたような気がして、なんとなくほっとする。

 

梨木さんの文章はとても繊細で思慮深く、かといって大袈裟ではなく、余計なものを削ぎ落とした美しさがある。だから読む人がそれぞれに、自分の心の深いところにしまっている気持ちを重ねる余白があるのかもしれない。

SENNの「Less is Beauty」という思想もきっと同じ。シンプルだからこそ、そこに込められた思いの深さが伝わり、受け取り方も深くなる。

 

そんなふうに感じられるようになっただけ、歳を重ねてよかったなと思う。

 

<PROFILE>

藤井志織

フリーランスのエディター/ライター。主に雑誌や書籍、WEBなどで編集や取材、執筆を行うほか、イベントの企画やディレクションを行うことも。担当した書籍に、草場妙子著『TODAY’S MAKE BOOK 今日のメイクは?』、オカズデザイン著『マリネ』、ウー・ウェン著『丁寧はかんたん』などがある。

Instagram:@fujiishiori1979