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未来で過去を変えていく。/Digital Editor 小野澤 亜南

平野啓一郎『マチネの終わりに』
テーマ「廻」
あっという間の師走。冬至が過ぎ、また新たな年を迎えます。日々が一直線の中の刹那ではなく、螺旋状の廻りの中に生きているということに気がつく、そんな節目の季節にぴったりの本をご紹介いただきます。
平野啓一郎『マチネの終わりに』01
平野啓一郎『マチネの終わりに』02
平野啓一郎『マチネの終わりに』03
平野啓一郎『マチネの終わりに』04
平野啓一郎『マチネの終わりに』05
平野啓一郎『マチネの終わりに』01
平野啓一郎『マチネの終わりに』02
平野啓一郎『マチネの終わりに』03
平野啓一郎『マチネの終わりに』04
平野啓一郎『マチネの終わりに』05

2020年は想像もしていなかった出来事が起きた印象的な一年でした。

いつもなら淡々と進んでいた人生が、ピタッと止まったような。

社会生活が止まるというのは、衝撃的であり人生の中で一度か二度あるかないかだと思います。そんな中で人生を振り返った人も多いのではないでしょうか。

 

私は生活と同じく、人生をシンプルにしたいと思うようになりました。

人よりも多くの情報や経験を得ることも大切だけれど、自分の欲しいもの・求めているものを意識して取捨選択すること。きっかけは「こんな状況だからこそ自分の人生をコントロールしたい」と感じた事。

そのためには少ないことを享受し、豊かに感じるマインドと、本質的なものを選ぶための質の良い経験が何より重要です。

 

人生とは無数の経験が積み重なっていくものだと考えています。

経験は人間の記憶上、過去に位置しています。しかし過去の印象を作るものは未来だとしたら。今の私たちがこの先迎える出来事ひとつで、過去の印象が大きく変わってしまうのです。

 

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える」

 

平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」からの一説です。

主人公の天才ギターリスト蒔野 聡史と、ジャーナリスト小峰洋子の強くも脆い、そんな40代の繊細な恋愛を描いた小説です。蒔野と洋子が初めて出会ったコンサート後の食事会のシーンにて。洋子が幼少期に遊んでいた大きな庭石の想い出を語ります。しかし洋子の祖母が庭で転倒し、その石に頭をぶつけて亡くなってしまう。洋子の中に存在する過去の楽しかった記憶は、辛い記憶に変わってしまった。そんなエピソードを聞いた蒔野が言った言葉です。

 

これから起きること次第で、過去の印象が変化する。

過去は未来と繋がっていて、螺旋状のように円を描きながら取捨選択を繰り返す中で印象が変化していく。

 

あの時こうしていればよかった。

あの時こう言えばよかった。

 

未来でどう行動するかが、私たちの過去は変化していくのです。

この未曾有の出来事が一つの価値ある経験になるように、私たち人間の成長につながるように。

 

 

<PROFILE>

小野澤 亜南

東京都出身。ファッション誌のアシスタントを経て、百貨店で会社員として働く傍らデジタルエディターとして複数メディアで連載を持つ。趣味はファッションと美容。好きなものはパリと猫。最近ハマっていることはマインドフルネス。

Inastagram :@anaaaaaaan