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いけばなのように/ 平田 春果

勅使河原蒼風『花伝書』
テーマ「潤」
ふとページをめくって出会った、ある一節が、乾いた心を潤してくれることがある。小さな泉ような、砂漠のオアシスのような、本棚の隅に置いてときどき読み返したくなる一冊。
いけばなのように/ 平田春果01
いけばなのように/ 平田春果02
いけばなのように/ 平田春果03
いけばなのように/ 平田春果04
いけばなのように/ 平田春果01
いけばなのように/ 平田春果02
いけばなのように/ 平田春果03
いけばなのように/ 平田春果04

現代社会において、あるがままの自分でありたいと願いながら、それが叶うことはあるのだろうか。

 

それならば自分自身がいけばなのように、人の手の加えられた存在であることを自認すれば良い、いつからかそう思うようになった。

 

空間を埋めるのではなく、草花で余白を創り出すいけばな。

 

独創的で自由な作風の草月流の門戸を叩き早や4年が経とうとしている。

自然から離れた植物を手に取りじっくりと観察すれば、そこには茎、枝、葉、花、蕾が連なっている。それらのどの部分を活かし、どんな色や線、そして花器で物語を思わせる空間を生み出すのか。その決断の時間はまるで、自分に装いを凝らす行為のようでもある。

 

草月流創始者である勅使河原蒼風先生の著書『花伝書』にこのような一節がある。

「イサム・ノグチがうちへきていった言葉がなかなかいい。松をいけて、松に見えたらだめでしょう。松が松でなく見えることは、大変ですね。」

わたしたちも、時には自分が自分ではないように振る舞わなくてはならない。けれどもそこには、創られた新たな美があるのだと、勇気を与えられている気がしてならない。いけばなのように、思慮深く空間を広げる存在として美しくあれ、と。

 

プロフィール

平田春果(ひらたはるか)

東京生まれ。幼少期をギリシャで過ごす。レコードショップBig Love Recordsクリエイティブ・ディレクター、いけばな草月流師範。翻訳家、セレクトショップGR8やP.A.M.などコーディネーターとしても活躍。

 Instagram:@haruka_biglove