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移ろいゆく中で。/ 小林 布結里

Shel Silverstein 『The Giving Tree』
テーマ「風」
東から吹く風が、長い冬を終わらせ、春の始まりを告げるころ。時代が大きく変わりゆく中で、どんな変化に対しても前向きに受け入れられますように。風のような自由な心になる一冊。
移ろいゆく中で。/ 小林 布結里01
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移ろいゆく中で。/ 小林 布結里01
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移ろいゆく中で。/ 小林 布結里05

風、というと「移ろう」というイメージが浮かぶ。

“持つ”より”知る”ことを求め始める風の時代となったばかりの今、静かだけど確かに肌に、その変化の移ろいを感じる。

 

まだ20代そこそこの頃、異国で暮らす事を決めた親友”アミ”とのお別れの時、アミが私にこの本をくれた。

 

この本は、木と男の子だけの話。
ずっとそこにあり続け、与え続けてくれる木と、
時を重ねて成長しながら変わり、その都度とにかく木に求め続ける男の子。

 

最初に読んだ20代は、与え続ける木を愛だと思った。
木のこの姿勢こそ愛なのだと、これから大人になる自分が理想とする考えを読み解いたように思った。

 

時が経って30代も半ばになり、アミが日本へ帰ってきた。
あれからお互い、少なからず色々経験していた。
女たちの経験は、それぞれが濃厚だ。

 

それで思い出して、この本をあの時もらったぶりに開いて読んだ。

 

そうしたら、男の子の傍若無人さにびっくりした。
ちょっと男の子、あんまりじゃないか。

 

しかし、木も木だ。身を削りすぎだ。
そんなに与え続けちゃうから、男の子はこうなってしまうんだ。

 

そんな読む側の大きな変化に笑ってしまった。

 

まだ色々知らないで理想ばかり追っていた20代は
木のような愛を与えられる人になりたいと読んだのに、
その難しさや、それは本当に愛なのだろうかとか、
自分の経験と重ねてみるようになっていて、おかしい。

 

この本は多くを語らずシンプルな分、常に余白をはらんでいて、
だから読む側はその余白に様々な物事をみるようになる。

本田錦一郎訳と村上春樹訳で印象はかなり違ってどちらも楽しいけれど、
英文のまま、感覚で読む方が自分と見つめ合えるようで面白い。
特にこの一文。

 

The tree was happy…but not really.

 

すごく余白たっぷりの一文だ。
これは自分の人生においても、これからもずっと考える一文だと思う。
その余白を感じる時、自分と向き合っていることに気づいた。

もがき、気づき、知る。

すると世界はまた違う色を帯びはじめる。

私が求める美しさとは、目に見えない余白から感じるこの工程だと思う。

 

 

<PROFILE>

小林布結里 / フリーランスPR

セレクトブティックマネージメントを経て、フリーランスPRとして活動中。キュレーションサイト「HATCH」のキュレーターとしても参加している。夜は銀座の老舗会員制バーに勤務。現在は休業。
Instagram:@fuyurikobayashi